【主訴】

挙児希望

 

【既往歴】

卵巣嚢腫

甲状腺乳頭癌

 

【現病歴】

X-2年結婚

X-1年妊活のため入籍前より通っていたクリニックを転院し大学病院へ通う。

X年人工授精を二回行うも結果につながらず、当院に来院。

 

【その他症状】

首コリ 腹部の冷え感

 

【治療方針】

採卵に向けた採卵数増加の報告のあった手法を用いて、卵巣の血流改善を目的として治療を行う。

①体全体で妊娠することを念頭に置いて、首コリ・足の冷え・疲労などの不定愁訴の改善

②採卵に向けて卵巣血流改善(学会で採卵数増加の報告のあった施術方法を用いて)

③移植に向けて子宮循環改善および免疫寛容

を目的として施術を行う

 

【治療経過】

採卵にむけての治療

SLにて星状神経節と子宮へ照射。陰部神経支配領域に刺鍼を行い低周波鍼通電療法を行う。

首こりや不定愁訴に対する治療も随時行った。

鍼灸SL併用療法は5~7日に一回のペースで採卵まで32回行った。

 

移植にむけての治療

SLにて星状神経節と大赫へ照射。下腿と仙骨部周辺に刺鍼を行い低周波鍼通電療法を行う。

首こりや冷えなどの不定愁訴に対する治療も随時行った。

鍼灸SL併用療法は5~7日に一回のペースで移植まで6回行った。

鍼灸38診目で胚盤胞移植を行い、その後妊娠反応陽性、胎嚢を確認した。

 

【考察】

採卵に向けた卵巣の血流改善と不定愁訴の治療を行い、

卵巣血流改善および免疫寛容を目的として治療を行ったこと、

また移植にむけた子宮循環改善および免疫寛容を目的として治療を行ったことが妊娠という結果に

繋がったと考える。

既往歴として甲状腺疾患があるが、この甲状腺疾患は自己免疫疾患の一つで

不育症の原因の一つとして考えられており女性に多いという特徴がある。

例として橋本病(甲状腺機能低下症)では一般的な量よりも甲状腺ホルモンの分泌が少なく、

流産や早産のリスクが高いといわれている。

不妊治療ではクリニックへの通院開始時や、体外受精をする際の血液検査などで判明する数値であり、

早期発見、早期治療に越したことはないが、無症状なケースも多々あり自己流で妊活を始める時などは

注意が必要である。