こんにちは。木村です。

今回は皆さんにご注意いただきたいことを申し上げたいと思います。

それは治療院が表記する妊娠率などの数字についてです。

不妊治療をされている方は子どもを授かりたいがために、藁をもすがる思いでいろいろな治療法や情報を収集していることと思います。そういったものを見る際は、注意深く見ていただくことをお勧めします。何なら、その数字や表現に対して疑うくらいでちょうど良いかと思います。まずは疑った目で見て、それを否定すれば、二重否定つまり強い肯定になるかと思います。

例えば、妊娠出産に関する数字を見るにしても、
・化学妊娠なのか
・臨床妊娠率(胎嚢確認以上)なのか
※当院では日本生殖医学会の規定である臨床的妊娠(胎嚢確認)をもって妊娠と考えています
・生児獲得率なのか
で対象とする分母・分子も変わるので、当然数字も変わってきます。

ここからは私の個人的考えになります。
不妊治療の患者さんを対象にしている治療院で、時々目を疑うような数字を見ることがあります。
これまで見ておかしい印象しかない!?ものは、、、
①「当院は人工授精が最も妊娠率が高いです」
②「15人中14人が妊娠しました」治療費は1回あたり2万円超えで、領収書を発行しなければ1000円割引です。
③短期間で妊娠に至ります!たった1回の施術で妊娠します!
などです。

①については、当院もそうですし、5か所以上の同業鍼灸院からも体外受精での妊娠が最も多いと聞いています。婦人科系学会でもタイミング、人工授精(どちらも体内受精)よりも体外受精の方が妊娠率が高いという報告も多数あるかと記憶しています。案の定(と言っていいのかわかりませんが)、①の鍼灸院は現在閉院しているかと思います(HPが見当たりません)。やはり患者さんも、そんなのには騙されないことのあらわれかと思います。何なら患者さんは、その施術者の発言や知識、手さばきである程度判断できていると感じています。

②この治療院に通っていて妊娠しなかった方が当院にお越しになりました。つまり15人中の1人の妊娠しない患者になってしまいました。当院で1年かかりましたが、結局妊娠し女児出産に至っております。15人中14人は9割以上の妊娠率になるので、そんなに高い妊娠率を実現するのなら、体外受精施設や婦人科が存在しなくなってしまいます。私の個人的疑問として、例えばピックアップ障害の場合体外受精施設なら精子と卵子を受精させることができるかと思いますが、治療院でどうやって(どんな方法で)受精させるのかが疑問です。もし治療院で受精させることができるのなら(それが確認できるのなら)、是非教えてもらいたいものです。
あと領収書発行しないのも疑問です。不妊治療はどうしても高額になりがちなので、少しでも医療費控除したいので、領収書が欲しい人が大半かと思います(当院では医療費控除で使える領収書を毎回発行しています)

③短期間で妊娠できる方法があるのなら、公の場で学会発表もしくは論文にすべきだと思います。そしてその方法を同業者に伝えるべきだと思います。それが患者さんを救うことになるからです。
ちなみに当院は初鍼から妊娠までに平均23~24回程度というデータがあります。卵胞が急激に大きくなり排卵するまでには約3~5か月程度かかる、つまり毎月排卵するにしてもその前に準備期間がある程度あることが教科書などに記されています。
後付けになってしまうかもしれませんが、当院でも胚盤胞到達数が改善するのが鍼灸治療を始めて3か月以降の場合が多いのは上記の内容とかみ合うのかなと考えています。(特にFSHの影響を受けにくい4か月前は卵巣の血流を良くすることで卵巣に栄養を渡し不要物を取り除くことで、その後良好胚に恵まれるのでは、と考えています)
数人ならたまたま偶然があるかもしれませんが(分母と分子の人数によっては偶然ではなく)、これをたった数回の治療や2~3か月で妊娠に至るなら、そもそも患者さんの妊娠力の方が大きかったのでは、と考えてしまうかもしれません。それだけ良い方法であるならば、ぜひ公の場で公表していただきたいです。
患者さんの守秘義務をうまく利用して、ありもしない偽りの数字を出しても、同業者はすぐ見抜くのではないかと思います。

最後に、、、
患者さんに寄り添う気持ちはとても大切です。目標達成に向けて同じベクトルをもって、悩みを共有し、解決方法を一緒に考え、達成した時の笑顔を見たいです。どんなに間違っても、自分の利益のために悩みの深い患者さんを欺くことは絶対にあってはならないです!!
私は患者さんの希望の光となれるよう、精進する所存です。

長々と失礼しました。