「また円形脱毛症になってしまった…」そんな悩みを抱える女性は決して珍しくありません。
一度治ったと思っても、気づくとまた新しい脱毛斑ができている。
このような円形脱毛症の再発に悩む女性が増えているのはなぜでしょうか。
今回は、鍼灸師の視点から円形脱毛症を繰り返す女性の特徴や原因、そして東洋医学的なアプローチによる対策について詳しく解説していきます。
なぜ女性に円形脱毛症が繰り返し起こりやすいのか
ホルモンバランスの変動が大きな要因
女性が円形脱毛症を繰り返す最大の理由は、ホルモンバランスの変動にあります。
月経周期、妊娠・出産、更年期など、女性の身体は常にホルモンの影響を受けています。
特にエストロゲンとプロゲステロンのバランスが崩れると、自律神経系にも影響を与え、結果として免疫系の異常を引き起こしやすくなります。
東洋医学では、このようなホルモンバランスの乱れを「腎気不足」や「肝気鬱結」として捉えています。
腎は生殖機能や成長発育を司り、肝は気血の流れを調節する臓腑とされており、これらの機能低下が脱毛につながると考えられています。
ストレス耐性の違いと社会的要因
現代社会において、女性は仕事と家庭の両立、育児、介護など多重の役割を担うことが多く、慢性的なストレス状態に置かれがちです。
また、女性は男性に比べて感情を内に溜め込みやすい傾向があり、これが「気滞」という状態を生み出します。
気滞とは、気の流れが滞った状態のことで、これが長期間続くと血流不良を招き、毛根への栄養供給が不足して脱毛が起こりやすくなります。
特に円形脱毛症を繰り返す女性の場合、このストレスパターンが定着してしまっていることが多く見受けられます。
冷え性と血流不良の影響
女性に多い冷え性も、円形脱毛症の再発と深く関係しています。
手足の冷えだけでなく、頭皮の血流不良も脱毛の原因となります。
東洋医学では「血は気によって動く」と考えられており、気の巡りが悪くなると血流も悪くなり、毛根に十分な栄養が届かなくなってしまいます。
鍼灸から見た円形脱毛症の根本原因
気血不足による毛根の栄養不良
鍼灸理論では、髪の毛は「血余」と呼ばれ、血液の余りから作られると考えられています。
つまり、血液が不足したり、質が低下したりすると、真っ先に髪の毛に影響が現れるということです。
円形脱毛症を繰り返す女性の多くは、慢性的な血虚(血液不足)の状態にあります。
月経による定期的な出血、妊娠・出産による体力消耗、授乳による栄養の消費などが重なることで、身体全体の血液が不足し、毛根への栄養供給が後回しになってしまうのです。
肝腎不足と自律神経の乱れ
東洋医学において、肝と腎は密接な関係にあります。
肝は気血の流れを調節し、腎は生命力の根源である「精」を蓄える臓腑です。
現代医学的に言えば、これらは自律神経系や内分泌系の機能に相当します。
円形脱毛症を繰り返す女性では、肝腎の機能低下により自律神経のバランスが崩れ、免疫システムが正常に働かなくなることが多く見られます。
これが自己免疫疾患としての円形脱毛症の発症・再発につながると考えられます。
円形脱毛症と不妊の関係
きむら鍼灸は不妊専門の鍼灸院で、不妊でお悩みの方に日々施術を行っております。
その中で気づいたことの1つに、「不妊で悩む女性に円形脱毛症が思いのほか多い」ということです。
だいたい不妊治療で通院している女性の1割くらいが円形脱毛症で悩まれています。この割合は相当多いと言えます。
当院ではこれは「自律神経の乱れ」が根っこにあるからと考えています。
円形脱毛症の大きな原因の1つは自律神経の乱れです。また不妊で悩む女性に共通することも自律神経の乱れです。
自律神経の問題が円形脱毛症や不妊に繋がっているのです。
鍼灸による具体的な治療アプローチ

全身調整による根本治療
鍼灸治療では、円形脱毛症を局所的な問題として捉えるのではなく、全身の気血の流れを整えることで根本的な改善を目指します。主に以下のような治療を行います。
- 腎気を補うツボ:腎兪、太谿、湧泉
- 肝気を疏通するツボ:肝兪、太衝、期門
- 気血を補うツボ:気海、関元、足三里、三陰交
これらのツボに鍼やお灸を施すことで、ホルモンバランスの調整、血流改善、自律神経の安定化を図ります。
頭皮への直接的なアプローチ
全身治療と並行して、頭皮の血流改善も重要です。
脱毛部位やその周辺に細い鍼を刺すことで、局所の血流を促進し、毛根の再生を助けます。また、百会、四神聡、風池などの頭部のツボを刺激することで、頭皮全体の気血の巡りを改善します。
心理的ストレスへの対応
円形脱毛症を繰り返す女性の多くは、脱毛への不安やストレスを抱えています。鍼灸治療には優れたリラクゼーション効果があり、副交感神経を優位にすることで心身の緊張を和らげます。
神門、印堂、耳神門などの精神安定に効果的なツボを使用し、心理的な負担を軽減することも治療の重要な要素です。
日常生活でできる予防・改善策

生活リズムの整備
規則正しい生活リズムは、ホルモンバランスの安定に欠かせません。特に睡眠は「血を生む時間」とされており、質の良い睡眠を確保することが重要です。
- 23時から1時の間は必ず就寝する
- 朝日を浴びて体内時計をリセットする
- 適度な運動で気血の流れを促進する
セルフケアとしてのツボ押し
日常的にできるセルフケアとして、以下のツボを優しく押すことをお勧めします。
- 百会(ひゃくえ):頭頂部にあるツボ。頭皮の血流改善に効果的
- 太衝(たいしょう):足の甲にあるツボ。ストレス軽減と肝機能の改善
- 三陰交(さんいんこう):内くるぶしの上にあるツボ。女性ホルモンのバランス調整
これらのツボを1日2-3回、各ツボ30秒程度優しく押すだけでも効果が期待できます。
まとめ:継続的なケアが再発防止の鍵

円形脱毛症を繰り返す女性の多くは、一時的な症状の改善に留まらず、根本的な体質改善が必要です。
鍼灸治療は、西洋医学的な治療と併用することで、より包括的なアプローチが可能になります。
重要なのは、症状が改善したからといって治療を中断するのではなく、継続的なケアを行うことです。
月に1-2回の定期的な鍼灸治療、日常生活の改善、ストレス管理などを組み合わせることで、円形脱毛症の再発リスクを大幅に減らすことができます。
もし円形脱毛症を繰り返すことでお悩みの女性がいらっしゃいましたら、ぜひ一度鍼灸治療を試してみてください。
個人の体質や症状に合わせた治療により、根本からの改善を目指すことができるはずです。