アトピー性皮膚炎に悩む方の中には、ステロイド薬だけでは十分な改善が得られず、副作用の心配もあって、他の治療法を探している方も多いのではないでしょうか。
そんな中で注目されている治療法の一つが「鍼治療」です。
今回は、アトピー性皮膚炎に対する鍼治療の効果について、最新の研究結果をもとに詳しく解説していきます。
アトピー性皮膚炎とは?
アトピー性皮膚炎は、強いかゆみを伴う慢性的な湿疹を特徴とする皮膚疾患です。
子供の頃に発症することが多く、成長とともに軽減する場合もありますが、大人になってから再発・再燃することも珍しくありません。
この疾患の原因は複雑で、免疫異常やアレルギー反応、生まれつきの皮膚バリア機能の弱さが関係しているとされています。
さらに、環境の変化やストレスなどの心理的要因も症状の悪化に大きく影響することが知られています。
従来の治療法としては、皮膚を清潔に保ち、保湿剤を使用しながら、主にステロイド外用剤による治療が行われてきました。
しかし、ステロイド薬による副作用や、長期使用への不安から、別のアプローチを探している人も少なくありません。
鍼治療のメカニズム

鍼治療がアトピー性皮膚炎に効果を示すメカニズムには、いくつかの要因が考えられています。
自律神経への働きかけ
アトピー性皮膚炎の悪化要因の一つとして、自律神経のバランスの乱れが挙げられます。
自律神経は内臓、血管、皮膚の働きを調節する重要な神経で、この働きが乱れることでアレルギー症状が悪化すると考えられています。
鍼治療は、特定の経穴(ツボ)を刺激することで自律神経系に働きかけ、バランスを整える効果が期待されています。
これにより、皮膚の炎症反応を抑制し、症状の改善につながる可能性があります。
酸化ストレスの軽減
森ノ宮医療大学の2020年の研究では、アトピー性皮膚炎患者と健康成人の酸化ストレス度と抗酸化力の比較を行い、鍼治療の効果について検討されました。
この研究では、鍼治療が酸化ストレスの軽減や抗酸化力の向上に関与する可能性が示唆されています。
免疫系への影響
鍼治療は人体の持つ自然治癒力を高め、バランスを崩した免疫機能を正常な状態に近づける効果があるとされています。
これにより、アトピー性皮膚炎の根本的な改善につながる可能性があります。
臨床研究から見える効果

近年、アトピー性皮膚炎に対する鍼治療の効果について、科学的な検証が進んでいます。
韓国の無作為対照試験
2021年に発表された韓国の研究では、軽度から中等度のアトピー性皮膚炎患者を対象とした無作為対照試験が実施されました。
週2回の鍼治療が軽度から中等度のアトピー性皮膚炎患者の症状軽減に効果的であり、重篤な副作用は観察されなかったという結果が報告されています。
この研究では、患者も評価者も治療内容を知らされない二重盲検法が採用され、より信頼性の高い結果が得られています。
中国の研究データ
中国では古くから鍼治療が行われており、アトピー性皮膚炎に対しても豊富な臨床経験があります。
偽鍼や偽鍼治療群と比較して、鍼治療とセチリジンの両方がアトピー性皮膚炎患者のかゆみ症状を有意に軽減できることが示されたという報告もあります。
実際の治療効果
臨床現場では、鍼治療によって以下のような効果が報告されています。
即効性のある症状改善
一部の治療院では、鍼治療を行うと、痒みが消え、赤みも薄くなり、浸出液も止まり、治療を行った日は、夜ぐっすりと眠ることが出来るという即効性のある効果が報告されています。
長期的な症状管理
鍼治療の効果は一時的なものではなく、継続的な治療により長期的な症状管理が可能になるとされています。週2回、4週間の鍼治療により、真の鍼治療群では偽鍼治療群と比較してアトピー性皮膚炎の症状が改善し、治療は2週目から効果的であったという研究結果も報告されています。
生活の質の向上
アトピー性皮膚炎は、かゆみや見た目の問題から患者の生活の質(QOL)を大きく低下させます。
鍼治療による症状の改善は、患者の睡眠の質や日常生活の快適さの向上にもつながることが期待されています。
安全性について
鍼治療の大きなメリットの一つは、その安全性の高さです。
副作用の少なさ
前述の韓国の研究では、重篤な副作用は観察されなかったと報告されており、他の多くの研究でも同様の結果が得られています。
ステロイド薬との比較
ステロイド外用剤による長期治療では、皮膚の萎縮や感染症のリスクなどの副作用が懸念されます。
鍼治療は、こうした化学的副作用のリスクが極めて低い治療法として注目されています。
治療の実際

治療頻度と期間
研究データによると、効果的な治療のためには週2回程度の頻度で、最低4週間程度の継続治療が推奨されています。ただし、症状の程度や個人差により、治療期間は調整される必要があります。
使用される経穴
アトピー性皮膚炎の治療では、一般的に以下のような経穴が使用されます。
- 曲池(きょくち):腕にあるツボで、皮膚疾患に効果があるとされる
- 血海(けっかい):膝の内側にあるツボで、血液循環の改善に効果があるとされる
- 風池(ふうち):首の後ろにあるツボで、風邪の邪気を取り除くとされる
これらの経穴は、患者の症状や体質に応じて選択され、組み合わせて使用されます。
まとめ

アトピー性皮膚炎に対する鍼治療は、近年の研究により一定の効果が科学的に証明されつつあります。
特に、軽度から中等度の症状に対しては、かゆみの軽減や皮膚症状の改善が期待できる安全な治療法として注目されています。
ただし、鍼治療は万能ではありません。重症な場合や急性期の症状に対しては、従来の医学的治療が優先されるべきです。
鍼治療を検討する際は、皮膚科専門医との相談のもと、適切な治療計画を立てることが重要です。
アトピー性皮膚炎は患者一人ひとりで症状や経過が大きく異なる疾患です。鍼治療も含めた様々な治療選択肢を検討し、自分に最適な治療法を見つけることが、症状の改善と生活の質の向上につながるでしょう。
今後も、より多くの質の高い研究データが蓄積され、鍼治療の効果と安全性がさらに明確になることが期待されます。
アトピー性皮膚炎に悩む方にとって、鍼治療が有効な治療選択肢の一つとなる可能性は十分にあると考えられます。
きむら鍼灸では、アトピー性皮膚炎でお悩みの方のための鍼灸治療を数多く行ってきました。
宇都宮市でアトピー性皮膚炎でお悩みなら、ぜひ一度ご相談ください。
