男性不妊になりやすい男性の特徴とは?原因と対策を解説

今日は多くのカップルが悩む「男性不妊」について詳しくお話しします。

不妊治療と聞くと、女性側の問題として捉えられがちですが、実は不妊の原因の約半数は男性側にあるとされています。

このブログでは、男性不妊になりやすい特徴や原因、そして対策について解説していきます。

目次

男性不妊とは?基本を知ろう

男性不妊とは、男性側の要因によって妊娠に至らない状態のことを指します。

具体的には、精子の量や質、運動性に問題があったり、精子が正常に射出されなかったりすることが原因となります。

WHO(世界保健機関)の定義によると、「健康なカップルが避妊をせずに定期的な性交渉を1年以上続けても妊娠しない場合」を不妊と呼びます。

そして、その原因が男性側にある場合を「男性不妊」と呼びます。

日本では、約10組に1組のカップルが不妊に悩んでいるといわれています。

そして、不妊の原因の約30~40%は男性側にあるとされていますが、近年ではその割合は上昇傾向にあります。

男性不妊になりやすい男性の特徴

では、どのような男性が不妊のリスクを抱えやすいのでしょうか。以下に主な特徴をまとめました。

1. 年齢が高い

女性の妊娠適齢期については広く知られていますが、実は男性も年齢とともに生殖能力は低下します。

特に40歳を超えると、精子の質や量が徐々に減少することがわかっています。

加齢に伴い、精子のDNA損傷リスクも増加し、妊娠に至りにくくなるだけでなく、流産リスクも高まるとされています。

もちろん、高齢でも十分に健康な精子を持つ男性は多くいますが、統計的には若い男性に比べて妊娠率は低下する傾向にあります。

2. 不健康な生活習慣を持つ人

日常の生活習慣は精子の生成に大きな影響を与えます。特に以下のような習慣は要注意です。

  • 喫煙習慣がある: タバコに含まれるニコチンや有害物質は精子の数と運動性を低下させ、DNAを損傷させることがあります。
  • 過度の飲酒: アルコールの常習的な過剰摂取は、テストステロン(男性ホルモン)の生成を妨げ、精子の質に悪影響を及ぼします。
  • 肥満: 過度の体重は男性ホルモンのバランスを崩し、精子の生成を妨げる可能性があります。また、体温上昇により精巣の温度が上がることも精子の質に影響します。
  • 栄養バランスの偏り: ファストフードや加工食品に偏った食生活は、必要な栄養素が不足し、健康な精子の生成を妨げることがあります。

3. 高ストレス環境にいる人

現代社会では避けられない「ストレス」ですが、慢性的な強いストレスは男性ホルモンの分泌を減少させ、精子の生成に悪影響を与えることがわかっています。

ストレスを感じると体内ではコルチゾールというホルモンが分泌されますが、このホルモンが高レベルで長期間続くと、テストステロンの生成が抑制されます。

また、精神的ストレスは性欲減退や勃起障害の原因にもなりえます。

4. 高温環境で働く、または長時間座り続ける仕事をしている

精巣は体温よりも約1〜2度低い温度で機能するように設計されており、高温は精子の生成を阻害します。

以下のような環境や習慣は精巣温度を上昇させます。

  • サウナやホットタブの頻繁な使用
  • パソコンを膝の上に長時間置く習慣
  • 長時間の座り仕事(トラック運転手、デスクワークなど)
  • きつい下着や ジーンズの常用
  • 高温環境での労働(製鉄所、パン屋、キッチンなど)

5. 環境ホルモンに多く触れる職業や環境にいる

農薬、プラスチック添加物、産業用化学物質などの環境ホルモン(内分泌かく乱物質)は、ホルモンのバランスを乱し、生殖機能に悪影響を与える可能性があります。

特に以下のような環境での長期勤務は注意が必要です。

  • 農業(特に農薬を扱う場合)
  • 塗装業
  • 化学工場
  • 特定のプラスチック製造業

男性不妊の主な原因

男性不妊の原因は多岐にわたります。主な原因を以下に詳しく解説します。

精子に関する問題

男性不妊の最も一般的な原因は精子に関する問題です。

  • 乏精子症: 精液中の精子の数が少ない状態(WHO基準では1ml当たり1500万未満)
  • 無精子症: 精液中に精子が全く存在しない状態
  • 精子無力症: 精子の運動性が低い状態
  • 奇形精子症: 形態的に異常な精子の割合が高い状態

これらの問題は、先天的な要因や後天的な要因(感染症、薬物、環境要因など)によって引き起こされることがあります。

ホルモンバランスの乱れ

男性の生殖システムはホルモンによって精密に制御されています。

特に以下のホルモン異常が不妊の原因になることがあります。

  • 脳下垂体からのFSH(卵胞刺激ホルモン)やLH(黄体形成ホルモン)の分泌不足
  • テストステロン(男性ホルモン)の生成不足
  • 甲状腺機能の異常
  • プロラクチン(通常は女性の授乳に関わるホルモン)の過剰分泌

精路の閉塞や異常

精子が作られても、精子の通り道(精路)に問題があると、射精時に精子が出られなくなります。

  • 精管閉塞: 事故や手術、感染症などにより精管が閉塞している状態
  • 先天的な精路の欠損: 生まれつき精路の一部が欠損している場合
  • 精索静脈瘤: 精巣周囲の静脈が拡張し、血液の循環が悪くなることで精巣の温度が上昇する状態

勃起・射精障害

性行為自体に問題がある場合も不妊の原因となります。

  • 勃起障害(ED): 十分な勃起が得られない、または維持できない状態
  • 射精障害: 早漏、遅漏、逆行性射精(精液が膀胱に逆流する状態)など
  • 性交痛: 性行為時の痛みにより正常な性生活が営めない状態

男性不妊の検査方法

男性不妊が疑われる場合、まずは以下のような検査を行います。

精液検査

男性不妊の診断において最も基本的で重要な検査です。この検査では以下の項目をチェックします。

  • 精子の数: 1mlあたりの精子数
  • 精子の運動率: 前進運動する精子の割合
  • 精子の形態: 正常な形状をした精子の割合
  • 精液量: 1回の射精での精液の量
  • 精液のpH: 酸性度を測定
  • 白血球の有無: 感染症の指標となる

WHOの基準では、正常値は以下の通りです。

  • 精液量:1.5ml以上
  • 精子濃度:1ml当たり1500万以上
  • 総精子数:3900万以上
  • 前進運動精子の割合:32%以上
  • 正常形態精子の割合:4%以上

ホルモン検査

血液検査により、男性ホルモン(テストステロン)や脳下垂体ホルモン(FSH、LH)などのレベルを測定します。

これにより、ホルモンバランスの乱れが原因かどうかを判断します。

超音波検査

陰嚢内の超音波検査により、精索静脈瘤や精巣の構造的異常、精路の閉塞などを確認することができます。

遺伝子検査

特に無精子症や重度の乏精子症の場合、遺伝的要因を調べるために染色体検査やY染色体微小欠失の検査を行うことがあります。

男性不妊の対策と治療法

男性不妊の原因によって、対策と治療法は異なります。以下に主な対策と治療法を紹介します。

生活習慣の改善

多くの場合、生活習慣の改善だけで精子の質が向上することがあります。

  • 禁煙・節酒: タバコとアルコールは精子の質に悪影響を与えるため、できるだけ控えましょう。
  • 適正体重の維持: 肥満は男性ホルモンのバランスを崩すため、適正体重を維持することが重要です。

バランスの取れた食事

亜鉛、セレン、ビタミンC、E、葉酸などの栄養素を十分に摂取しましょう。特に以下の食品がおすすめです。

  • 亜鉛:牡蠣、赤身肉、ナッツ類
  • セレン:ブラジルナッツ、マグロ、卵
  • 抗酸化物質:ベリー類、緑黄色野菜、ナッツ類

適度な運動

週に3〜4回、30分程度の有酸素運動が理想的です。

ストレス管理

瞑想、ヨガ、十分な睡眠など、ストレス軽減策を取り入れましょう。

高温環境の回避

サウナや熱いお風呂の長時間利用を控え、きつい下着は避けましょう。

薬物療法

ホルモンバランスの乱れが原因の場合、以下のような薬物療法が行われることがあります。

  • ゴナドトロピン療法: FSHやLHを補充することで、精子生成を促進
  • 抗エストロゲン薬: クロミフェンやタモキシフェンなどを使用し、間接的にFSHやLHの分泌を促進
  • アロマターゼ阻害薬: テストステロンからエストロゲンへの変換を抑制する薬
  • 抗酸化剤サプリメント: ビタミンE、C、コエンザイムQ10などの抗酸化物質を補給

外科的治療

精路の閉塞や精索静脈瘤などの構造的問題がある場合、手術が必要となることがあります。

  • 精索静脈瘤手術: 拡張した静脈を結紮(けっさつ)する手術
  • 精管再建術: 精管切除術(パイプカット)後に再び精子が通るようにする手術
  • TESE(精巣内精子採取術): 無精子症の場合、直接精巣から精子を採取する手術

男性不妊と鍼灸治療

最後に、男性不妊に対する鍼灸治療の有効性について触れておきましょう。

実は東洋医学的アプローチである鍼灸治療は、男性不妊の改善に一定の効果が期待できることが、近年の研究でわかってきました。

鍼灸治療のメカニズム

鍼灸治療は、以下のようなメカニズムを通じて男性不妊に効果を発揮すると考えられています。

血流改善: 鍼治療は局所の血流を改善し、精巣や生殖器官への血液循環を促進します。

これにより、栄養素や酸素の供給が増加し、精子の質が向上する可能性があります。

ホルモンバランスの調整: 鍼治療は視床下部-下垂体-性腺軸(HPG軸)に作用し、生殖ホルモンのバランスを整えることが研究で示唆されています。

特に、FSHやLH、テストステロンなどのホルモン分泌を正常化する効果が期待できます。

抗酸化作用: 鍼灸治療には抗酸化作用があり、活性酸素による精子へのダメージを軽減する可能性があります。

ストレス軽減: 鍼治療はリラクゼーション効果が高く、ストレスホルモンであるコルチゾールのレベルを下げることで、間接的に生殖機能を改善します。

臨床研究の結果

いくつかの臨床研究では、男性不妊患者に対する鍼灸治療の効果が報告されています:

  • ある研究では、週2回、5週間の鍼治療を受けた男性不妊患者グループでは、精子の運動性と形態が改善したという結果が出ています。
  • 別の研究では、乏精子症の患者に対する鍼治療により、精子濃度が増加したことが報告されています。
  • 精索静脈瘤による不妊に対して、鍼治療が症状と精液パラメータの改善に寄与したという報告もあります。

まとめ

男性不妊は決して珍しいものではなく、多くのカップルが直面する問題です。

不妊の原因の約半数は男性側にあると言われており、年齢、生活習慣、ストレス、職業環境など様々な要因が関与しています。

男性不妊の対策としては、まず生活習慣の改善が基本となります。禁

煙、節酒、バランスの取れた食事、適度な運動、ストレス管理などを心がけましょう。それでも改善が見られない場合は、専門医による検査と治療が必要です。

また、補完的アプローチとして鍼灸治療も選択肢の一つとなります。鍼灸治療は血流改善やホルモンバランスの調整を通じて、精子の質を向上させる可能性があります。

最後に、男性不妊は適切な診断と治療により、多くの場合で改善する可能性があることを忘れないでください。

早めの相談と対策が、赤ちゃんを授かるチャンスを広げます。不妊に悩むカップルが、希望を持って治療に取り組めることを願っています。

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