【既往歴】

特記すべきことなし

 

【出産歴】

あり→X-4年出産

 

【当院来院前の病院での不妊治療歴】

1人目は人工授精にて妊娠、出産。

2人目不妊治療再開。AMH1.04ng/ml、月経3日目FSH10.7,LH2.7

人工授精7回→すべて陰性

体外受精 採卵1回→空砲

 

【現病歴】

出産後2人目挙児を希望。ご主人43歳(X-1年)、精液検査では異常なし

1人目が人工授精で授かったことから、人工授精7回行うも陰性。

体外受精にステップアップ。卵巣刺激はアンタゴニスト法。

採卵を行ったが空胞。もともと他院の不妊鍼灸を受けていたが、

当院に通院し妊娠された方からの紹介で当院へ来院。

 

【随伴症状】

肩こり、腰痛、足の冷え

 

【所見】

臍下斜め45度に硬結あり(両側)

 

【施術方針】

まずは採卵予定があることから、SL(スーパーライザー:低出力レーザー)を併用した育卵鍼灸を

週1回の頻度で施術を行う。その後は凍結胚移植とのことなので、胚凍結後は着床鍼灸へ切り替えた。

その間、肩こり、冷えなども適宜治療した。

 

【鍼灸前後の採卵の変化】

当院での鍼灸施術前は採卵できなかった(空砲)

鍼灸施術後の採卵では採卵数4個、そのうち胚盤胞2個凍結

 

【考察】

二人目希望したのも40歳を超えてからということで、体外受精も厳しくなってくるところである。鍼灸で効果を出すには、1回やったから終わりという”魔法”ではないので、定期的に(5~7日に1回が目安)複数回行うことで加算効果を期待するものと考えている。これは服薬でも同様である。排卵誘発剤も1個内服したから終わりということではなく、数日間連続で服用することで、誘発効果が出てくる。

本症例で当院での治療前の採卵では空胞だったが、当院での治療後の採卵では採卵数4個に対して胚盤胞2個凍結(胚盤胞獲得率50%)は年齢を考慮すると良い結果だったと考えている。(不妊治療は個人差が大きいので、すべての方が鍼灸治療後に同様の結果になるとは限らない)

鍼灸では卵巣とか子宮とか部分だけで見ればよいというのではなく、妊娠を受け入れられる体質づくりとして体全体で診ていく必要がある。例えば「肩こりは関係ないから施術する必要がありません」というのではなく、

肩こり→ストレス→交感神経優位→血管収縮→血流低下

となるので、肩こりも改善していく必要がある。こうして妊娠に向けた底上げを図ってから、採卵予定のある方には育卵鍼灸移植予定のある方には着床鍼灸を行いながら、病院での治療をすすめることで結果が出やすくなると考えている。