【主訴】
挙児希望
【既往歴】
卵巣癌
【現病歴】
X-13年結婚。
X-11年クリニックを受診し検査を行う。タイミング法を進めるが途中で中止
X-7年タイミング法で陽性確認後中絶オペを行う。
X-3年治療を再開し、体外受精を2回行うも結果が出ず
X年3回目の体外受精を控え、
卵質の改善を目的に当院に来院。
(結婚前に卵巣癌のある右卵巣は摘出済み)
【その他症状】
肩こり 足部と腹部の冷え
【治療方針】
採卵に向けた卵巣の血流改善と不定愁訴の治療を行い、卵巣血流改善および免疫寛容を目的として治療を行う。
【治療経過】
SLにて星状神経節と子宮への照射。陰部神経支配領域に刺鍼を行い低周波鍼通電療法を行う。
肩こりや冷えなどの不定愁訴に対する治療も随時行った。
鍼灸SL併用療法は5~7日に一回のペースで79回行った。
その間に3回の採卵を行い、4回目の採卵でその後陽性の確認が取れる卵が採れた。
※鍼灸施術後実施した以下の4度の採卵では卵巣刺激方法の変更や転院は無い。
※ここでは採卵日の月経周期〇日目はD〇と表記する。
採卵成績
採卵日 | 採卵数 | 受精卵数 | 移植胚 |
①D15(21鍼目) | 8個 | 3個 | 分割胚 |
②D13(53鍼目) | 7個 | 4個 | 分割胚 |
③D15(68鍼目) | 5個 | 3個 | 分割胚 |
④D12(79鍼目) | 7個 | 5個 | 胚盤胞(グレードAとB) |
採卵後、胚盤胞移植を行い陽性確認。胎嚢と心音も確認ができた。
その後むくみやつわり症状への治療を33週まで行った。
【考察】
採卵に向けて卵巣の血流改善を目的として治療を行ったことが、良好胚の採取につながったと考える。
排卵するには、約三か月程度の準備期間を経て排卵されるといわれており、
今周期に排卵する卵があるとすれば、それは約三か月前から卵巣内で待機していた卵である。
つまり採卵の機会がある周期の三か月程度前から卵巣の血流を改善していくことが理想的である。
卵巣嚢腫やチョコレート嚢胞は卵質の低下につながると考えられているが、
鍼灸SL併用療法で卵巣の血流を改善し、採卵まで卵巣内の栄養状態を改善しておくことで
採卵数の増加、胚盤胞到達率の向上につながると考えた。